2011年7月30日土曜日

月の下にて。




『チューベローズ』のクラッチブーケ。

南国を思い出させるエキゾチックで甘美な香り。

初めて一人でハワイのマウイ島に行った時、
空港まで迎えに来てくれた友達が、この花のレイを首に掛けてくれた。
そのレイ、ドライフラワーにして今でも持ってます。

バリ島のホテルには、いつもロビーにこの花が飾ってあった。
ただバサッと花瓶に入れてあるだけで様になる。
バリの空気にいちばん似合う花。

この香りをかぐと、その時の想い出が一瞬で蘇ります。
それもとてもリアルに。
風とか、においとか。

『チューベローズ』は、
テキーラの原材料でもある『リュウゼツラン』という植物の仲間。
ミルキーな色をしたこの花は、先だけほんのりピンク色。
夜になると香りが一層強くなります。
だから別名『月下香』。


夏のナイトウェディングに、こんなブーケを。
新郎さんにはお揃いのレイ。

チューベローズの甘い香りと、
月の白い光に包まれて。

花嫁さんは限りなく美しく、神秘的に。
新郎さんは深く優しく、紳士的に。
月の下で永遠の誓いを。

僕が月で、君が月下香。
とかなんとか言っちゃったりしてね。
こんな妄想を抱かせるくらい、甘くロマンティックな月下香の香り。
柔らかく幸せな気持ちで心を満たしてくれる媚薬かも。

想い出も、誓いも。
時々ゆっくり振り返ってみる。
それはだいたい夜の帳がおりた頃。

蒼い夜。
月の下にて香る花。

皆様、素敵な夜を。










2011年7月27日水曜日

泥に染まらず。




7月の誕生花で、ベトナムの国花、『ハス』。
早朝に咲き、昼には閉じる神秘的な夏の水生植物です。

仏教において『ハス』は、
泥の中から伸びてくるにもかかわらず、
清らかで美しく、気高く咲き誇る姿が智慧や慈悲の象徴とされ、
昔から聖性な花と称えられています。
今でも、お盆のお供えものの下にはハスの葉を敷きますよね。

写真は何年も前にバリ島で撮ったものですが、
一面ハスで覆われた池は、思わず手を合わせたくなる神々しさ。
花が開く瞬間の「ポンッ!」という音をいつか聴いてみたい。

ハスの花が咲き終わると、その後にできる実が『蓮台(レンダイ)』。
上段の写真の花の中心、黄色い部分が、『蓮台』になります。
インパクトのあるドライフラワーになるので、とても重宝します。
この蓮台の部分が蜂の巣に似ていることから、
『ハチス』と名付けられ、それが訛って『ハス』と呼ばれるようになったそうです。

ハスの葉には撥水性があり、
葉の表面に付いた水は丸まって葉の上を転がります。
だから、葉は濡れません。
その水滴が葉についた泥や小さな虫などの異物を絡めとります。
なので、葉は汚れません。
こういう現象を「ロータス効果」と呼び、
テクノロジーの分野などにも再現されているというから驚きです。
すごいぞ、ロータス!


数千年前の種子が発芽したり、
数百年振りに開花したり。

古来の仏教から現代のテクノロジーまで。

目まぐるしく移り変わる世の中で、
ずっと変わらず、凛としているハスの花。

時代に取り残されても、はぐれても。
無理について行っても仕方がないから。
自分のペースを見極める。

私にとって大事なことは、
泥から生じて泥に染まらず。

神聖なる花、ハスの花。

皆様、暑中お見舞い申し上げます。












2011年7月16日土曜日

檜扇の奥義。




京都の街は祇園祭一色です。
今日は宵山。
涼しげな祇園囃子の音色とはうらはらに、うだるような暑い1日。

写真の花は『ヒオウギ』。
葉が檜扇を広げた形に似ていることから、この名前が付きました。
『檜扇』と書かれたり、『日扇』と書かれたり。

花は一日花。
花が終わった後には『烏羽玉(うばだま)』と呼ばれる黒く光沢のある実が出来ます。

祇園祭の時期になると、京都ではこの『ヒオウギ』がたくさん飾られます。
なぜなら、『烏羽玉』は魔除けになるという昔からの言い伝えがあるから。

もともと祇園祭は邪気を払うためのお祭り。
神様が通る道を清めるために、鉾が巡行するのです。
毎年7月17日が鉾巡行の日。
その後に、神様が乗った御神輿が氏子の町内を練り歩きます。
鉾が動くと祇園祭も終わったように思われがちですが、
7月いっぱいまで祇園祭は続きます。

厄除け、魔除けの意味を込めて。
飾る花にもこだわりを見せるのが、いかにも京都人らしいと思います。

京都の伝統。
檜扇の奥義。

今回は生け花の立花を参考にさせてもらって、活けてみました。
やっぱり、京都ならではの伝統は守っていきたいものです。

鉾を見に出かけられたら、
町家に飾られている『ヒオウギ』も探してみてはいかがでしょう。
より一層、祇園祭の風情を感じられるはず。

ただ、今日の人出予想は40万人だそうです。。。
皆様、迷子と熱中症にはお気をつけて。







2011年7月12日火曜日

慎ましき無花果の花。




花の無い果実。
『無花果』と書いて『イチジク』。

花は無いように見えて、じつはあるんです。
幹の先に付いた若いイチジクの実に見える、あの中に。
花を外には見せない植物。

実のように見えるものは花嚢と呼ばれる花の袋。
その中にきちんと雄花と雌花があるそうです。

『イチジク』はその花嚢の中に昆虫が住み、受粉させているんだって。
実を付けるためには一番確実なのかもしれません。
だけど、今の栽培品種は昆虫の媒介なしで、雌花だけで果実がなるんだとか。


『イチジク』の葉は、写真の下の葉『ヤツデ』に似ています。
『ヤツデ』より少し小振りなかわいい葉は、
旧約聖書のエデンの園で、アダムとイブが腰に付けてたあの葉っぱ。
裸なことに気付いたアダムとイブが、身に付けたのがなぜ『イチジク』の葉だったのか。
真意は私には分かりませんが、『隠す』ということに掛けてる?とか?
『イチジク』は花を見せない植物だから。
「整いました!」と小さくつぶやく私を許して。

今回のアレンジは、『イチジク』1本と『ヤツデ』1枚で、
究極にシンプルに。
同じ値段で、たくさん花が入ったアレンジは作れるけれど。
同じものはまたとない、この『イチジク』の枝とそれに合う器なら、
私はこちらを選んでしまう。


気付かれなくても、見えなくても。
きっと誰しも。
努力があったり、優しさがあったり。
葛藤があったり、挫折があったり。

なのに誰しも。
私の周りは。
おごること無く、慎ましく。

花を見せずに実を付ける。

無花果の木のように。

そんな方々に敬意を込めて。






2011年7月9日土曜日

継承の姫林檎。




7月に入ったとたん、京都の梅雨も明け、真夏のような毎日が続いております。
皆様いかがお過ごしでしょうか?

今日のアレンジは、お水なしでも置いておけるように、というご依頼。
ドライフラワーなどを使ってお作りしました。
ドライフラワーを使用すると、どうしても秋とか冬の雰囲気になりがち。
なんとか夏らしく仕上げるために、今回は姫リンゴとノイバラで黄緑色をプラス。
こう暑いと、緑のリンゴもすぐに紅く熟してしまいそうで心配ですが。。。
お客様にもとても満足して頂けたので良かった!

不思議な形をした茶色いキノコのようなもの。
それは、以前このブログの『熱意の種』で紹介したバンクシャーの実。
山火事の火の刺激で種子を弾かせるという植物です。

小さな黄緑色の粒が『ノイバラ』。漢字で書くと『野茨』。バラ科の低木。
山などに自生する野バラの実。
こちらも熟すと実は赤色に。
この『ノイバラ』、万葉集にも登場しており、
その時代は『ウマラ』と呼ばれていたそうです。
その『マラ』が、現代の『バラ』の名前の由来。

写真下の方に見えるのが『姫リンゴ』。
『姫リンゴ』を含むリンゴもじつはバラ科の植物。

他にもバラ科の植物には、身近な花がたくさんあります。
サクラとか、イチゴとか。
だからノイバラも姫リンゴも、サクラやイチゴも咲かせる花が似ています。
属が違うから違うように見えるけど、元を辿れば同じ科の種で親戚です。


『姫リンゴ』は盆栽用に栽培される品種。
以前、私も盆栽をやってみたくて、祖父に教えてもらっていました。
でも、教わり始めて間もなく、祖父は入院、その後他界しました。
盆栽名人だった祖父が、毎年盆栽の姫リンゴをたわわに実らせていたのを思い出します。
まだまだ教えてほしいことがたくさんあったけど。
祖父からもらった盆栽の本は今でも大事にしています。

祖父は盆栽、私は切り花。
属は違えど、辿れば同じ。
植物を愛でる心は、祖父から受け継いだのだと思います。

祖父が残した最高級の盆栽を。
初心者の私にはどうすることもできなかった悔しさを思い出して。
いつかまた、本気で盆栽をしようと思った時に、
あの本を開いてみようと思います。

今、自分がやるべきことを一生懸命やってから。






2011年7月2日土曜日

クルクマと憂鬱と。




気付けば7月。
この1週間は、前の職場のお手伝いや、お客様との打ち合わせ、友人の結婚式などで
あっという間に過ぎ去ってしまいました。
でも、暑さだけは肌で感じておりました。。。夏、ニガテ。

今日のアレンジ。
1枚目の写真は真上からの図。

ピンクに紫に黄緑と、原色を使ってアジアンなアレンジに。
ベトナムのホテルに飾ってあるような花をイメージしてお作りしました。

南国の青空に映えるような色の『クルクマ』。
写真左下のピンクのお花。

ピンクの部分は花ではなく、その隙間に青紫色の小さな花をつけます。
写真には写ってないけれど。

『クルクマ』はショウガ科の花で、
『クルクマ』とはアラビア語名で『ウコン』のこと。
私もよくお世話になっているあの『ウコン』は、『クルクマ』の仲間なのです。

『ウコン』は漢字で書くと『鬱金』というように、
金色のような薄い黄色の花を咲かせて、
写真のピンクの部分が、『ウコン』の場合は、白色です。

ショウガ科で、ウコンの仲間。
そう聞くだけで、夏に強そう。。。


身近なところで気付かずに。
この花も、あの花も。
私を助けてくれているのかもしれない。
いろんな意味で。
違う形で。

鬱陶しくても、憂鬱でも。
熱帯夜でも、真夏日でも。
『クルクマ』には夏が似合う。

形も色もエキゾチックな夏の花。

夏に負けそうな私に活力を。



皆様も暑さに負けないようご自愛くださいませ。